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給与所得者等再生手続とは?

従来、(改正前)民事再生法は、法人を念頭に置いた規定でしたので、個人が申立をすることは稀でした。

しかし、そうだとすると、債務が膨らんだ個人は、最悪破産手続しか取り得る手段が残されていないということになり、住宅を手離す必要がありました。そのため、個人が破産以外の方法で経済的再起更生を図るための法整備の必要が認識され、平成13年より個人再生の手続きが法定されました。

個人再生には、「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」という二種類の手続が用意されています。もっとも、主に利用されているのは小規模個人再生ですので、皆様が法律事務所に相談に行かれて個人再生の打合せを行う場合には、主として小規模個人再生の手続きを前提とされていることと思われます。

それでは、なぜ小規模個人再生の方が給与所得者等再生よりも利用されているのでしょうか。平たく言えば、前者の方が後者よりも弁済すべき額が少なくなるからです。 すなわち、小規模個人再生の場合は、最低弁済額と清算価値の内、より高額な方の金額が弁済すべき額となりますが、給与所得者等再生の場合は、これらに加え、「可処分所得の2年分」という基準が加わります。具体的には、定期収入から税金等を差し引いて返済に充てられる最大限の金額(これを「可処分所得」といいます。)を算定し、その2年分が返済金額となります。

そして、給与所得者等再生の返済金額は、必ず小規模個人再生で返済することになる金額よりも高額でなければならないとされています。 したがって、返済額という点からすると、小規模個人再生の方が給与所得者等再生よりも有利となります。 また、収入要件に関しても、給与所得者等再生の場合は、小規模個人再生の収入要件(継続性又は反復性)に加え、定期収入の額の変動幅が小さいと見込まれることが必要です(239条1項)。この点でも、小規模個人再生の方が要件が緩いためメリットが大きいといえます。

それでは、なぜ給与所得者等再生などという制度が存在するのかというと、再生計画案の決議の点で違いがあるのです。 すなわち、小規模個人再生においては、再生計画案に対して再生債権者による決議が行われ、この決議が否決されると、再生手続は廃止されます。具体的にいいますと、再生債権者の頭数の半数以上又は再生債権額の過半数の反対・異議があると、再生計画が認可されないのです。

これに対し、給与所得者等再生の場合は、再生債権者による決議は行われません(もっとも、決議はありませんが、給与所得者等再生の場合でも、再生計画の認可・不認可について意見を述べることはできます。)。つまり、たとえ債権者の反対・異議があったとしても、認可を受けることが可能なのです。 ですので、債権者の異議によって小規模個人再生の再生計画が認可されない可能性が高い場合には、給与所得者等再生を利用するメリットが生じるということになります。

当事務所においても、かかる異議を避けるために、敢えて返済額の大きい給与所得者等再生で申し立てることがあります。 以上のとおり、債権者の異議によって小規模個人再生の認可が受けられないおそれが大きい場合には、給与所得者等再生を利用することになりますが、そのようなおそれが小さい場合には、たとえサラリーマンであったとしても、小規模個人再生を選択することが多いでしょう。

個人再生のご相談は、神戸で昭和45年設立の、多重債務問題に特化した当法律事務所までご相談下さい。